散漫

乙女ゲームの感想を書きます

何もかもここにはなく -ブラウル WS BN 猫種ルート-

BLACK WOLVES SAGA -Weiβ und Schwarz-
Bloody Nightmare
猫種ルート(メヨーヨ、オージェ)の感想です。
PCとPSPで発売された2つのゲームを1本にまとめたVita移植版で、トップ画面でそのどちらかを選んでプレイする形式。
キャラごとに記事書くつもりでしたが、種族ルートほぼ共通なのでこの形で。

※ネタバレです


■猫種ルート
種族ルートに入るときのムービーに羽の散った鳥籠が描かれていて、ようやくこのゲームで猫種が強い立場に設定されている理由がわかりました。鳥籠の鳥を引きずり出して襲うのは猫だから、なんですね。
あまりのキチガイぶりに、なぜ攻略しなければならないのか?と何度か虚無に。救いはないよと散々噂で聞いていたのでそのぶん気は楽だったかもしれません。結局メヨーヨのことはけっこう好きになってしまったんですけど……。
狂気の共依存、永続の鏡合わせ、とみせかけて、実際のところはそうでもなかったなあと思うんですよね。メヨーヨは自分を守るのに必死で、オージェは自分の快楽しか追っていない。何だかんだ片方がいなくなっても普通に生きていけそうなのが不思議な塩梅でした。
ただまあ、母親が毒親すぎて……。彼女が被害者であり、追い詰められて病んでいたのはわかる、分かるんですが、やっぱり双子が完全に壊れるきっかけはそれまでの周囲の仕打ちより母親の自殺幇助だと思うので……。 この点においてはメヨーヨもオージェもひたすらにかわいそう。
双子が狂気をひけらかすたびにそのトラウマを思い出してちょっと憐れみがうまれそうになりましたが、途中でネッソが言い放った「お前らの悪夢に俺達家族を巻き込むな」が正論すぎて笑ってしまいました。その通りだよ。以降流されそうになるたびにこの台詞を思い返して正気に戻っていた。ありがとうネッソ。

CCKもっと見たかった~!
かわいいねずみだけど、双子の幼少期から一部始終を見ており、遺体処理なんかの汚れ仕事もやってて、なお狂気に染まった様子なく平凡な葛藤を残しながらメヨーヨに忠実に仕えている感じが気になります!レオニダスいとしい。

以下、キャラ個人とEDの感想。
見た順はメヨーヨgood→オージェbad→メヨーヨbad→オージェgood→Twin good→Twin bad
です。


■メヨーヨ
大概残虐な行為をはたらくわりに、フィオナに対する仕打ちに性的なものがまるでなくて、なぜか心配になってしまった。これが一応R指定つかない乙女ゲーだからなのか、それとも彼にそのへんの情緒が育ってないからなのか……。元のPC版ではもっとキッツいんでしょうか。
アルルとの因縁は、酷い奴だと怒ることも、なんて愚かなんだと呆れることもできなかった。その後の狼狩りはだめですが、エルヴィラを殺してしまうまでの顛末は、メヨーヨあんまり悪くない……悪くなくない……?
私もコンプレックスとプライドを拗らせている人間なので、ここでちょっと同情がうまれてしまった。まあどんなにかわいそうでも完全なる彼の勝手な事情であって、周りがそれに付き合う義理は全くないんですけどね!

昔は普通に尊敬してたよ、この憎悪の対立劇はオマエの一人相撲だよとメヨーヨに呪いを残すアルルよかったですね!
メヨーヨが救われないのは自分のものを奪われ自意識を傷つけられたからではなく、もっと根底にあるコンプレックスのためであり、その象徴であるアルルを殺すのと引き換えに顔に傷を負ったメヨーヨの心に永遠に平穏は訪れない、という結論、めちゃくちゃ好き!
アルルがメヨーヨを殺さず片目を抉ったのは彼をより苦しめるためということだったけど、ラスの意趣返しでもあるんだろうなあ。
ギランがラスを逃がすシーンはやっぱりメヨーヨとアルルの結末を経たほうがぐっとくるので、先に見てよかったですね。ひとり逃げるラス、美しかった。


・good
アルルを殺し狼種を国から一掃した後、憑き物が落ちたように良き王となったメヨーヨからただただ優しくされるフィオナ。これがメヨーヨの本来の姿なのかもしれない、と迷いと少し慈しみをも見せる。

フィオナに子供産ませて第二の自分にするつもりかと思いましたがそんなことはなかった。わたしが胸糞脳なだけだった。
終わらない錯乱みたいなEDになるかと思ったけど、思いの外穏やかな終わりかたでしたね。いや不穏なんだけどね。ノーマルED臭がすごいけどグッドEDですからね。
アルルの呪いはメヨーヨの中に燻りつづけるのだろうし、フィオナのいうように僅かでも逃れる素振りを見せれば豹変するのでしょうけど、それでも覚悟していたほど悪くないなと思ってしまった。調教されている……。

最後までフィオナに僅かのときめきも親愛の揺らぎも生じなかったメヨーヨ。ED後ゆっくりと愛のようなものが芽生えてきたりするんでしょうか。スペシャルシナリオ読んだら子供ができてもなお愛より執着、けれど以前よりはまし、ぽかったですが……。
でもこれ絶対オージェがぶっ壊しにくるよね?という警戒感が拭えない。メヨーヨもそれを分かっていて彼をあちこちに飛ばして仕事させているのでは。
さすがのオージェもいまフィオナに手を出したら信用を失うのは明らかだし、メヨーヨがフィオナに執着している限りは希望はある……?
でも落ち着いたメヨーヨを再び壊そうと思ったらやっぱりフィオナをどうこうするのが有効だろうし……オージェならうまくやるだろうし……というかあいつメヨーヨに殺されたがってるから何も安心できないな……。
(ここまでオージェ攻略前に書いたのですが、あらゆる意味でそれどころじゃなかったですね)
いろいろと薄暗い、穏やかだけど綱渡りのようなEDでした。


・bad
アルルにつけられた傷が悪化し、死に瀕するメヨーヨ。看病をするフィオナには「お前は俺のものだと繰り返されるばかりで答えを求められず、一方通行なのがさみしい」「自分にはもうメヨーヨしかいない」とすがるような気持ちがうまれる。
メヨーヨの死後、オージェから「どうでもいい」と解放されたフィオナは窓枠に足をかけ、唯一自分を待っていてくれる人のもとへ……。

……純愛、だった気がする……(錯乱)。愛っぽいものが……うまれていた気がするんだ……どうして死んでしまったんだメヨーヨ……いやでもそもそもはメヨーヨが元凶で……いや……?
どうでもいいならどうして放っておいてくれなかったの、というフィオナの言葉がしんどかった。本当にそれ。彼女は双子に運命を弄ばれるだけ弄ばれて放り出されたのだ、という印象が強く残る独白でした。
それでもなぜか、goodよりは、メヨフィはアリ、という気持ちになってしまったんだよな……。goodとbad両方見たら聞けるボイスで「俺のものだということを一生忘れず永遠に生き続けろ」とか言うんですけど、その声も優しいんだもん……。
この後のオージェはどうしたんだろう。唯一、彼が嫉妬……羨ましがる?かもしれないEDだと思いました。


■オージェ
メヨーヨを狂わせているのはオージェであり、真にヤバイのは彼のほうである、というのはプレイヤーには序盤で明かされるし、二人きりのシーンなんかも多いので印象はエグいくらい残るんですが、実はフィオナとそんなに関わってないんですよね……。
フィオナも一応この人けっこう怖い人なのでは……と感づいてはいますが、それも夢の中の話だし、ユリアン殺しまでは本当にメヨーヨの影なんだよなあ。
兄に対する愛がめちゃくちゃ難しいな……と思いました。好きだからおもちゃにしている、と、楽しませてくれるおもちゃだから好き、の境目が曖昧なように感じた。
顔に同じ傷をつけられて歓喜するイベントと「兄さんに殺されるなんて最高」のインパクトが強くて、彼にとってのハッピーエンドはサイコーの兄に殺されることだと思ってたんですが、そうでもなかったんですよね……。メヨーヨは相手が思い通りにならないと切れるタイプですが、オージェは急にふつりと興味をなくすタイプなのかなあ。
フィオナに対する「特に面白味のない女なのに兄さんに執着されてるから嫌い」というスタンスもあまり一貫してなくて、訳わからなさに拍車をかけていた。なんか……嫌いというほどの感情も向けてなかったよね……!?


・good
憎しみのやり場を失くしフィオナを再び拷問するメヨーヨを見かね、オージェは彼女を労るようになる。しかしそれがメヨーヨに露見し殺されそうになったため、やむなく兄を手にかけることに。
オージェを許すことはできないが国のために彼を支えることはできる、と決意したフィオナは愛の言葉を交わすが……。

グッド 意味 検索

こ、こ、殺されとるやないかい!ぼかされてるけど!badを先に見て、じゃあgoodはメリバかな~と思ってたので本当にびっくりした!!
エンドロール後の一言、いいですね……。いやよくはないけど、演出として……。
フィオナもオージェの異常性は分かっているはずなのに絆されてしまって、もう!もう!というもどかしさがありましたが、あの状況で優しくされたらそりゃあね……。兄弟というのはフィオナも人一倍重きを置いてきた関係ですし、兄を想って涙ぐむ姿を見せられたら、まあ、そりゃあね…………。
しかしまあこのオージェ、本当に楽しかったんだろうか?騙されてるフィオナを見るのは痛快だっただろうけど、殺してしまったら終わりだもんな。そう考えると殺してないんだろうか……?殺される一瞬の絶望顔が見られたらそれで満足なんだろうか……。
とかぐるぐる考えていたんですが、スペシャルシナリオで普通に殺されていたことが判明。そ、そう……特にその後の予定があるわけじゃないのね……気まぐれなのね……。


・bad
狼狩りを果たした後、きちんと治世しながらも心は脱け殻になってしまったメヨーヨ。オージェはそんな兄に興味をなくし、殺してフィオナを手篭めにする。
産まれた子供はどちらが父親かわからないが、オージェにとって用無しとなったフィオナもまた殺されてしまう。そして子供はオージェの新たなおもちゃに。

メヨーヨgoodで頭をよぎった胸糞展開に近いというか……メヨーヨは私が思うよりやわく、オージェは私の想像を越えてイカれていたというわけだ!
メヨーヨが腑抜けてしまったらまた狂わそうと動くと思ったのですが、あっさり殺してしまうとは。うーん。計りかねる。
父親がどちらか確かめる術はもう無いけども、たぶんメヨーヨじゃないかなあ……。オージェの息子だったらほんとうに自分の代理になってしまうし、それはオージェの楽しみ方とはちょっとずれるんじゃないかと。愛した兄メヨーヨの息子であるほうが、彼にとっては楽しいんじゃないですかね。
次世代ということで思い出されるのが生き残ったラス。彼が自ら復讐に出るとは考えづらいけれど、こういった戦いは一族郎党皆殺しが鉄則ですから……。殺し漏れがいる限り、オージェに嗅ぎつけられて再びの争いへ仕向けられる未来を想像してしまうよなあ。
メヨーヨgoodからこれに移行してもおかしくないという点でも罪の重いED。


・Twin good
穏やかな日々を送るメヨーヨとフィオナ、二人にちょっかいをかけて楽しそうに笑うオージェ。
家族はみんなきっと国外で平和に暮らしている。優しい夫と二人の子供に恵まれ、私は幸せなのだと微笑むフィオナの頬にはなぜか涙が伝うのでした。

記憶に蓋をして、見ないふり知らないふりで全てを諦め庭園の小鳥になるエンド。
物理的にはいちばん幸せな気がしますが、どうだろう。フィオナが双子の母親のことを知るのもこのエンドだけなので、光は見える気がするんです、が、子供がな……。
猫種の女の子と人種の男の子ということで、人種は王位を継げないからそのうちいなくなるのだろうなとフィオナは考えていたけど(その思考ももうアレ)、女の子もどうなんだ……。継げるのかな……?
オージェはこのED退屈してると思うんですが、大人しくしてるのはやっぱり子供について何か企んでるんだろうなと勘ぐってしまうよなあ。


・Twin bad
自分の選択の結果家族は殺されたと思いつめ、罰を欲するフィオナ。
今では地下室で双子に鞭打たれる痛みだけが罪悪感を癒し、自我の境界を保つ。

分かりやすい理論のbad。フィオナの「もッとォ……!」が悲しかった。あんなに清い子だったのに……。
いつ飽きられるか分からないあたりが更に気が重い。


以上です。噂に違わず特殊な、それはもう特殊なお話でした。攻略できない攻略対象の意味を理解。
一通りの流れを見てユリアンを最後にしようかな~と思ったので、次は狼種ルートにいきます。