散漫

乙女ゲームの感想を書きます

そこで、暮らす -ブラウル WS BN 家族ルート-

BLACK WOLVES SAGA -Weiβ und Schwarz-
Bloody Nightmare
家族ルート(ネッソ、ザラ、ユリアン)の感想です。

※ネタバレです


◼家族ルート
双子によって崩壊していく国を見捨て、 狼種と手をとり運命に立ち向かうこともせず、ひたすらに大切な人との平穏を選び隣国へ逃れるルート。
いちばん現実的なルートだと思います。その過程で遭遇するそこそこの障害を乗り越えながら絆を深めるわけですが、ネッソとザラは元々家族なので初期値が高く、境遇にしてはゆるめな恋愛過程でした。ゲーム開始時点より前の日常、その延長という雰囲気。
誕生日パーティーのくだりは乙女ゲーぽいな~と思いつつ、逃亡中なのに意外と余裕あるな!?と笑いました。
まあ面子の2/3は内に狂気を秘めてるんですけどね……。それでも猫種ルートを考えるとまるで別のゲームのようです。ユリアン以外。ユリアン以外。

以下、キャラ個人とEDの感想。
ネッソgood→ザラbad→ユリアンbad→ザラgood→ネッソbad→ユリアンgood→ユリアンtrue
です。


◼ネッソ
血の繋がりは無いとはいえ兄妹なのに……という戸惑いは当然フィオナも抱いていて、けれどそれをあまり伝えないなあと思ったんですが、 たぶん考える時間がなかったからなんでしょうね。状況が切羽詰まっていて、きちんと考えを回す猶予が与えられていない。ネッソはおそらくそれを分かって仕掛けている(国外脱出が始まってから明らかに押しが強い)ので、たちの悪い男だなあと。
リジェの病みお兄ちゃんて、男性キャラにも人気あるんですよね。ザラとは長年の親友関係を築いているし、エルザからの信頼も得ていて、世間向けの顔が完璧。ヤンデレは狡猾……なんだなあ……。
けどまあ、実は身構えていたほどの「ヤバイお兄ちゃん」ではなかったです。他人に危害を加え……なくもないけど、あくまでフィオナに何かされたときに限るし、フィオナも強制的に監禁されたりはしなかったし……。元々がファンタジーで病弱な令嬢という特殊な環境なので、多少過保護でもそんなに違和感がないというのも大きいかもしれません。幼い妹が暮らすためだけの塔を作るよう進言するのも、よくよく考えると相当ではあるんですが。


・good
国境越え直前に襲撃にあい崖下に転落したふたり。その後仲間たちに救出されるが、フィオナを庇ったネッソは深手を負っていた。
脱出した他国でフィオナの看病を受けながら、傍にいられる今が一番幸せだ、墓まで一緒にいよう、またふたりの塔を築こうと囁くのだった。

わけわからんまま終生の恋人にされてた感がすごい……。
他の仲間たちはどう思ってるんだろう。
後日談も短いし「どちらが本当のネッソか分からないなあ」というふわっとした内容で、うーん……。どちらも思考停止で情愛に絡めとられてしまっているのかなあ。
ネッソが一番テンションおかしい、というか唯一異常性を露にしてきたのがこのEDだったんですよね。ずっと重めのシスコンではあるけど、なんだかんだで体面は保っていたんだよなあ。下手に幸せと独占を知ってしまったのがキーになったのかなと思います。
身構えていたほどヤバくはなかった、とは言いましたが、これがgoodというのはやはりまともではない。


・bad
追手から逃れる途中、崖下に転落したふたり。フィオナは無事だったが、ネッソは土砂に生き埋めになってしまう。
必死に土を除けようとするが、全身を掘り起こすには間に合わなかった。フィオナは仲間たちが迎えにきてもネッソが死んだことを受け入れられず、亡骸にすがり続ける。

分かりやすいbad。フィオナが遺体の前から動かない、というところで終わるけど、おそらくザラたちが引きずってでも薬打ってでも連れていくはずだから、まあ生き延びはしたのでしょう。
そもそもフィオナ自身はネッソと恋仲で結ばれているとは思っていないので、その後ネッソに操を立てて他の男性と結婚しないとかもなさそう。少し立ち直ることができれば、それこそザラとかエルザとか……。


■ザラ
元奴隷であるとか、ネッソの従者になる話を蹴ってフィオナ専属になったとか、ここまで知らなかった話がたくさん出てきたルート。
子供の頃はわざと意地悪して、それと知らずに泣きついてくるフィオナを馬鹿だと思っていたという話は普通にコワ……と思いましたけど……。こういう面もあるからネッソの幼馴染としてやってこれていた……?
ザラはとにかく能力面で優秀すぎて、彼がいないと詰んでたなあというシーンが他キャラルートでも多かったですね。ゾディバの特効薬とか、シナリオ根幹に関わってくることですし。


・good
追手に矢を射かけられながらも、なんとか逃げのびたフィオナたち。
ザラはゾディバの特効薬を完成させるが、発症していないフィオナに注射してもそのまま発症が無くなるため、本当に効果があったのかは結局分からない。だからその後もずっと側に居続けて確かめなければ、と二人は笑いあった。

一生見守ってなくちゃね、という言い回しがバカップルじみてて平和……!
後日談で結婚予定してたけど、それもきちんと「結婚の準備をしている」というふうで良いなあと思いました。このゲームでいちばんしがらみとか考えず将来に安心できる。
ネッソがどうするのか気にかかりはしますが、彼がなんとか認められるギリギリラインなんじゃないかなあと信じたい。この二人なら合法的に傍にいることもできるし。子供とかの話になるとちょっと分かりませんけど……。


・bad
逃亡の最後、背後から射られた毒矢によりザラだけが命を落としてしまう。
彼は矢に当たったのが自分でよかった、できればずっとお仕えしたかったと微笑んだ。最期に残したゾティバ抑制薬のレシピにより、ザラは死後もフィオナを守り続ける。

やさしいノーマルエンドという印象。
ネッソもユリアンもきちんと第二の人生を歩み、実質未亡人のように静かに暮らすフィオナを案じていたりと、色々なことが他エンドに比べるとすごくまっとうだなと思いました。



ユリアン
このゲームでいちばん驚かされた人。豹変した瞬間のウワッ感がすごかったです。攻略キャラに「俺はあなたの玩具です」連呼させたりするぅ……?
序盤でなんか喋りかたがたどたどしい?中の人は存じているけどこんな感じじゃないよな?という疑問はあったのですが、その後の演技を聞いて納得。すごい。
彼にどんな道が用意されているのか興味があって、最後の攻略にしました。


・good
追手に向かって王子としての虚勢を張ることに成功したユリアンだが、そこに現れたオージェの言葉で再び心を壊されてしまう。
しかし、フィオナの声で己を取り戻したユリアンは、「もうあなたたちの玩具ではない」と過去に決別。逃げ延びた先、ユリアンは出自ゆえ就職に難儀するが、それでもあなたを養う甲斐性がほしいとぼやきながら、二人は穏やかな生活を噛み締める。

流れは想定できてましたが、自我を取り戻したユリアンにオージェがかつてないほどブチ切れたのにびっくりした……。
なんとなく、アルルに対するメヨーヨの沸騰を思い起こさせました。幼少期に(ユリアンのせいではないが)苦しめられた相手を地に這わせ欠落を満たしていたのに、それを跳ね除けられて激昂したという感じでしょうか。
ユリアンのお話はめちゃくちゃ鬱屈としたシリアスなんですが、それを乗り越えた先が職だの養うだの甲斐性だので、本当に方向性ががくんと変わって笑ってしまった。微笑ましいね……。


・bad
オージェの指示に従いフィオナを引きずっていくユリアンを、思わず突き飛ばしてしまったフィオナ。崖から落ちていく彼は、フィオナのよく知っている、優しい顔をしていた。

同じ時間を過ごしすこしは心が近づいたと思っていたユリアンがあっさりと元の狂気に引き戻されてしまう絶望、その場で危害を加えるのではなく恐ろしい場所にずるずると連れていかれる絶望、結果的にフィオナ自身が手をかけてしまうという絶望、と数分の間にフィオナのメンタルが削れパニックに陥っていくのが見事。
フィオナも壊れて連れ去られてしまうし、もしこの後ネッソザラが助けにきてくれたとしてもなあ……。


・true
国を守るためユリアンと共に王城へ戻ったフィオナは、当然のごとく双子に捕らえられ監禁されてしまう。
日々拷問を受け続けるフィオナを双子のしもべとしてただ見つめているように思えたユリアンだったが、実は有力貴族を味方につけるべく動いていた。
結果見事に双子を追い落とし、国王の座に就いたユリアン。その後双子がどうなったのか、ユリアンが何をしているのか、予感を見ないふりをして、平和な日々を享受しようとフィオナは目を閉じるのだった。

true……これがtrueかあ……!
立場が逆転し、ユリアンが双子を拷問するようになる。双子が今までの報いをまるっと受けるという、ここまで無かったED。滲み出る怨嗟と残虐性が濃くて、ユリアンでこれやるのかあと唸りましたが、彼もまた猫種でしたね。
猫種で王子だけども双子と違って心優しい青年である、という人物像で、「あくまで犠牲者」だったユリアンも、やはり積年の憎悪を抑えることはできず加害者に回ってしまったという点で、悲しく寂しい結末だなあと思いました。まったくもって仕方のないことではあるんですけどね……。

ユリアンがフィオナに告白するシーンのネッソが思いの外普通……というか理性的で驚きました。やっぱりgoodのようにうっかり成就の味を知ってしまわない限りは踏みとどまれる人なんだろうか。


これでBNは全ED回収完了です。
いちばん好きだったのはメヨーヨbadかなあ……。初回プレイ時は猫種はないな……と思っていたので自分でも驚きなんですけど……。
BNは猫種中心のバージョンなのでそこの感想が濃くなりがちでしたが、家族は狼種中心のLHでも攻略できるようなので違いが楽しみです。ちょいちょい出てくるエルザが好きだったので期待。